太陽光発電 ソーラー電池内容の要約

畳のわずか数センチの高さをランキングに利用しょうといういかにも日本的な知恵はいつ頃まで有効だったのだろう。
平安時代の寝殿造りの段階をピークとして、次第に衰えてゆく。
次の鎌倉時代になると、板の間の周辺にグルリと敷き回すようになり、さらに進むと、室町時代には、ギッシリ敷き詰められる。
こうなると、効果はなくなる。
もちろん庶民の間では、相変わらず畳ナシ状態が続いているが、位の上下に敏感な上層の家では、室町時代には畳式ランキングは消えた。
やがて、庶民の家にも畳は進出し、江戸時代に入ると、長屋の八つぁん熊さんの家でも、畳は敷き詰められるに至る。
日本の建物の進歩とは、畳式ランキングの消滅の歴史とも言っていいのだが、しかし、例外もないではない。
ある一つの場では最後まで伝統が堅持された。
ローヤ。
そう、牢屋。
牢屋では、明治維新の直前まで、畳の厚さが位の象徴だった。
一番エライ牢名主は何枚も重ねて座り、その下の配下は一枚に座り、新入りやザコは畳レス。
畳は、古代において、王者の座の象徴として出現したわけだが、突然、出現するわけにはいかない。
すでに実用的なものとして使われていて、それが象徴として光の当たるところに引き出された、というのが妥当を筋道だろう。
象徴化する以前の実用的な段階を教えてくれるのは古代の天皇の畳の使い方で、人に接見する時の他にもうひとつ、寝る時にも使った。
畳を二枚敷き、二枚の理由は想像にかたくないが、その周りに風が吹き込まないようにシールドを立て、具体的には几帳(布をたらした木製建具)を立てたり、土壁で塗り回して〝塗ごめ″にしたりして、その中に入って寝た。
広い板の間の住宅の中でのキャンプ生活。
人間、起きて半畳、寝て一畳。
これだと、起きて一畳、寝て二畳。
こうした言い方の由来はまことに古いものがある。
起きて半畳と寝て一畳のどっちがより原点に近いかというと、寝て一畳の方だろう。
藁の性格からこの想像は正しいと思う。
藁の保温力は実に優秀で、木綿の比じゃない。
子供の時、稲刈りの終わった後の藁の山の中に潜り込んで遊んだことがあるが、晩秋でも半裸で十分なほどだった。
弥生時代になって稲作が始まり藁が手に入るようになると、おそらく、人々は、こぞって寝床用に敷き込みはじめた。
竪穴住居に住む人々は、全面に敷き詰め、高床住居に住む人々は、土間全面じゃなくて寝るに必要なだけを敷き、敷いただけだと散らかるから上にムシロか何かでカバーした。
あるいは、ムシロが先で、その下に藁を入れるようになったのかもしれないが。
そうした高床住居での藁とカバーがやがて畳へと進化した。
ここで文を終えようと思ったが、読み返してみると畳という言葉の語源の探求から書きはじめ、答えを出さずに違う話に進んでしまった。
起承転転になっている。
結を一行ですまそう。
畳の語源というものは、たたむから来たのだった。
びっしりと敷き詰める以前、時と場に応じ、たたんでしまったり出したり移動したりしていた。
世界の敷物のうち、たたむことのできるものは畳しかない。
前項は、畳について述べたから、今度は土足の問題に触れよう。
土足の問題、これこそ日本の近代が直面した日常生活の大難題だった。
靴や草履を外で履いているかぎり何の問題もないが、履いたまま家の中に入り、畳の上に上がると、一気にプロブレム。
欧米はじめ世界のたいていの国はそうしているのに、日本においてはプロブレム。
土足摩擦というか、この間題に日本人がはじめて悩まされたのは、今から百四十八年前の幕末のこと。
開国をめぐるアメリカとの交渉の中でだった。
今も昔も、なぜか、日本の国内の慣習が槍玉にあげられるのはアメリカとの交渉の時。
黒船艦隊に乗って釆航したペリーの一行は、開国を求め、下田で幕府との交渉に入る。
場所は下田の寺。
武装した兵士を引き連れたアメリカ人交渉団の一行は、日本側が厳重に警護する門を通り、玄関の前まで来ると、立ち止まりもせず、そのまま段板を踏んで式台(昔の格式ある玄関)に上がり、さらに進んで畳の上に踏み込み、そのままの勢いで畳廊下をズンズン進んで、座敷に入った。
これが日本の格式高い玄関に、固い靴の底が板を踏むカンカンカンカン高い音が響き渡った最初の日である。
畳の上を土や砂をなすりつけながら履物が通過したのもこの時が最初。
欧米人は信長の時代にも日本に来航しているが、その時はちゃんと靴を脱いで上がっているというのに。
顔に泥を塗られるというが、日米対決の最初のシーンで畳の面に泥を塗られてしまったのである。
どうしてそんなへマをしでかしたのか。
敷物を敷いておくとか、土足のうえから何かカバーを履いてもらうとか、そういう配慮がなされなかったのはなぜだろう、と今、書きながら考えている。
応対する日本側は、役割分担をしていたと思う。
交渉に臨むグループ、通訳のグループ、などなどの直接前面に立つグループの他に、会社でいうと総務のような裏方のグループがあって、駕龍の手配や馬の世話、畳に座ることを拒むという欧米列強との交渉のテーブルとイスはどう手配する、会食のメニューや座席の順、たとえば対面して座るのか、並んで座るのか、対面するならどっちが床柱を背にするか、飲み物はワインか、酒か、お土産はどうする、てな具合に次ぎから次ぎに湧いてくる難題に総務部は頭を悩ましていたにちがいない。
前例があればいいが、皆目ないだけに、前例を尊ぶ総務としてはまことに悩ましい一日で、席順やメニューといった失敗の許されない方面に気配りを集中投下していた。
さしもの総務の気配りも底をついていた。
灯台もと暗し、足もと略し。
まさか土足のまま畳に……。
この下田の交渉のあと、江戸城で将軍との対面が行われるが、その時は下田に懲りて、ちゃんと耕毛艶が敷かれ、機能上も体面上もノープロブレムなのが証明された。
日本伝来の畳の上に直に座したり臥したりする生活と、欧米舶来のイス、テーブル、ベッドの生活、この正反対の暮らし方の対決第一ラウンドは、欧米優勢のうちに終わった。
具体的に見ると、畳の上には排毛髭を敷いてジュータン敷きに見せかけ、テーブルはどう手配したか知らないがとにかく置き、イスはお寺にあった中国式ので間に合わせる。
そして、欧米人は靴のまま上がり、日本側は偉い人は草履で上がり、偉くない人は裸足で上がる。
幕末の第一ラウンドの次は、明治の文明開化の第二ラウンド。
今度は、日本対欧米ではなくて、日本人の中での、畳の生活と洋風の土足生活の勢力争い。
役所、会社といった公的、社会的な場での決着はすぐにつき、板の床に土足にイス、テーブルが定番として確立する。
完全欧米化。
しかし、住宅はそうはいかない。
いろんなタイプが現れる。
まずトップの明治天皇御一家はどうか。
幕末の対外交渉時の将軍家に倣い、畳の上にジュータンを敷いてのイス、テーブル、ベッド、土足、の生活が始まる。
旧江戸城に入ったから一時的にそうしたわけじゃなくて、明治二十一年に宮殿(明治宮殿)を建てたときも、新築なのにわざわざ畳を敷いてその上にジュータンをかぶせている。
わざわざそんな複雑なことをしたのは、畳にジュータンを敷いた時のクッション性のある足触りがまことによろしかったからとも考えられるが、理由は定かでない。
以来、天皇は畳に座ったり、布団に寝たりはしなくなる。

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